僕を殺してください


「ご苦労だったな、シトリ。わがままを言ってすまなかった。」

微笑みながら袋を受け取り、メゾはシトリの頭を撫でた。

「とんでもありません。でも本当、初めて創造するのに初心者キットに付け足すなんて珍しいですよ。」

メゾは一日前に箱庭の創り方を学んだばかりで、今始めて世界を創ろうとしている。
初心者キットとは、初めて世界を創る神のために用意されている初歩的な材料のことだ。

「何か創りたい世界でもあるのか?」

シェゾがメゾの隣で聞いてくる。
メゾは口を笑みにしたまま、1つだけ用意された箱の前へ移動した。
袋から一掴み粉を握り、箱にかける。
ザアアァァ…
箱の中に渦が巻き、袋の中身全てをかけ終えた頃には、緑の山々と海、街や人々が生まれていた。

「綺麗ですねー。」

箱を覗き込み、シトリが呟く。
シェゾはメゾの顔を見て、何かを思い出した。
あぁ、生まれてきた俺を、心から迎えてくれたあの人の顔だ。

「私の世界…。リュークよ、共に歩み、共に成長しよう。」

心のもずくは人の心に大きく影響するもの。
その在り方は、その者次第。
どう生き延び、どうのような歴史を作る…?
リュークの誕生、そして全ての始まり。

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