僕を殺してください

「いつもありがとね。」

中にある木製のダイニングテーブルには、焼きたてのパンと紅茶。
そして朝食の準備をしていたリリアの母が、笑顔で迎え入れてくれた。

「いえ、こちらこそ。いつも母の看病をして頂いて、ありがとうございます。」

アルムは丁寧に頭を下げた。
母は数年前から病気を患い、寝たままの状態なのだ。
リリアの母が友だちのよしみで毎日看病に来てくれている。
アルムと父は昼間、仕事に行ってしまうから。

「当然よ。でもまぁ、日に日に父親に似てくるもんだねぇ。男の子ってのは。」

嬉しそうにアルムを母親の視線で見つめてくる。
なんとなく照れ臭くなるアルム。

「そ、そうですか?まだまだ父のようにはいきませんが…。」

アルムの父は家具屋を営んでいる。
その腕と人柄の良さで、お店には常連が多い。
今は父のもとで修行しながら、店を手伝っている。

「アルムは女性客に人気があるって、おじ様言ってたよ?」

くすくす笑いながら、リリアは椅子に座る。

「からかわないでください…。」

困った顔をしたアルムも椅子に座り、いい香りのパンをちぎって口へ運んだ。


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