僕を殺してください
メゾは創るための神である。
世界を創り、それを見守る者。
そしてシェゾは、それを壊すための神。
メゾが創った世界を壊すのが役目。
直接己の手で壊すことは禁断だが、人間の世界を壊す方法はいくらでもあった。
「今までそう言って、どれくらい箱庭が壊れたと思う。」
シェゾはメゾを見つめ返しながら聞いた。
メゾが世界を創り始め、それと同時に箱庭崩壊を行ってきた。
暗闇の空間には沢山の破片が散らばっている。
ここは箱庭世界にとっての宇宙。
破片は星となって輝いていた。
「脆い人間ばかりだったのだ…。だがリュークは、今でもなお生き続けている。」
シェゾは再びリュークと言う名の箱庭に、視線を戻した。
「確かに。しかし、どんなに強かろうとも、俺は壊す者としての目的を果たす。今回は今までのようにはいかんぞ。」
三日月の形をした口元。
メゾはシェゾが本気だと悟った。
「シェゾ、頼みがある。悪魔を放ってくれ。壊すのは、人間が悪魔に呑まれた時だ。」
メゾからの頼み事は初めてだった。
それだけ愛着が湧いてしまった。
シェゾはそれを喜ばない。
創る者として、1つの世界に執着することは許されないから。
「…分かった。悪魔の全管理は俺がする。それと、1度放ったら一生この箱庭からは悪魔が消えることはない。いいな。」
メゾは少し戸惑った。
許されない事だと分かっている。
自分は神なのだから。
壊すことがシェゾの役割。
「ああ。」
そう言って、リュークへと眼差しを注いだ。
願いを託すように。
こうしてシェゾは悪魔を放すため、リュークへと降りていった。