僕を殺してください
「ジル王。」
シェゾはリュークを治めているジル王のもとを訪れた。
リュークでは春を迎え、街中満開の桜で飾られている。
「そなたは…。どうやってここへ…」
夜中、王室に突然現れたシェゾに、ジル王は驚きを隠せなかった。
「俺はシェゾだ。神をやっている。ジル王、あんたに伝えねばならないことがある。」
シェゾは窓際からジル王に少しずつ近づいた。
黒いローブの裾を引きずり、顔が見えないように深くフードを被って。
「な、神だって!?私に伝えたいこととは…。」
半ば信じられなかったが、ジル王は素直にそれを受け入れた。
ジル王の目の前に立ったシェゾは、大きな紫色の布袋を自分の隣に現した。
「この世界は試される。人間故の欲に負けるか勝つか。それを見極めるため、各街に教会を造れ。そしてこれを1個ずつ奠る(まつる)のだ。」
そう言いながら、袋から中身を1つ取り出す。
手に握られているのは黒い球体。
それは不透明だが、闇を閉じ込めたような空間が見えた。
「試される…。神が私達を…。それは?」
シェゾの言葉を重く胸に受け止め、ジル王は黒い球体を覗こうとする。
「やめておけ、直接覗けば闇に囚われるぞ。これには悪魔が入っているからな。」
球体をジル王の視線から逸らすように、再び袋へしまう。
「あ、悪魔!?なぜ教会に悪魔など…!」