僕を殺してください
ジル王はシェゾの考えに驚愕した。
神がなぜ悪魔を与えるのか。
「これが試練だ。人間の欲への。それに、これは俺の意思ではない。」
シェゾは淡々と話し、ジル王の手に袋を手渡した。
「とにかく、あとはあんた達次第だ。もしその悪魔に呑まれたら…この世界は終わる。チャンスはくれてやろう。よく考えて決断するんだな。」
そう言い残して、シェゾは窓をすり抜け、闇夜へと消えていった。
「神が与えし試練…。」
ジル王はしばらくの間、その場から動けなかった。
人間がどうして己の欲に勝てようか。
欲のない人間など、何処を探してもいないというのに。
この試練は絶望的では…。
我らに未来を生きる希望はあるのだろうか…。
アルムとリリアが生まれる、たった十数年前の春だった。