俺はキミの生徒





「……修司」


また、加奈さんの声が聞こえた。


そうだ。まだ隣に加奈さんいたんだった。



震えそうな声を堪え、いつも通りの声を絞り出した。



『………なんですか』

語尾が少し震えてしまった。


耐えろ。耐えろ、俺。




「行きなよ」



『えっ』


自分の声とは思えないほど弱々しい声。

俺…弱すぎだろ。



「早く!早く行きなよ」


俺には加奈さんが何を言っているのかまったく分からなかった。



「もたもたしないの!

今…今お姉ちゃんを励ませるのは修司だけだよ!」

そんな厳しい声でやっと、自分を取り戻す。



「お願い。修司。

お姉ちゃんのところに…行ってあげて…」


加奈さんの語尾が震える。


俺は何も言わずに部屋の中へ入った。

そして素早い動きで部屋を出る。



1週間寝ていたせいで、体がもたつく。



それでも精一杯、走り。


精一杯、叫んだ。






『……………柚木ちゃん…っ』
















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