俺はキミの生徒
声をかけてすぐに柚木ちゃんは振り向かなかった。
柚木ちゃんのことだからきっと、涙を拭っていたんだろう。
「修司?久しぶりだね。
風邪はもう大丈夫?」
なぁ、柚木ちゃん。
それでもいつものように振る舞ってるつもり?
笑顔が、痛々しいんだよ。
『そっちこそ…大丈夫なのかよ』
一瞬、柚木ちゃんの顔から表情が消えた。
でもすぐに取り繕われ
「なんのこと?」
と、言われてしまった。
『慎くん…結婚、しちゃうんだろ?』
焦らすことも、
遠回しに聞くことも、
俺はあえてしなかった。
どうせ柚木ちゃんの傷に触れることに変わりはないんだから。
「そうみたい。
慎くん、すごく幸せそうだった」
柚木ちゃんはふっと悲しげに笑った。
『俺の前で…無理すんの、やめろよ』