俺はキミの生徒
「好きな人、いるんだよね…」
千絵先輩は俯く。
耳にかけた長い黒髪が顔を隠した。
「でも、絶対叶わなかったり…して、ね?」
一瞬見えた千絵先輩の横顔が切なげで。
思わず、目を逸らした。
『なんで…
なんで、叶わないんですか?』
人の恋愛に特別興味があるワケじゃない。
でも、同じような境遇の人の恋愛は少し、気になる。
俺も叶わない恋、してるから。
「あのね、あたしの好きな人…教師、だったり」
へ?!と、思わず大声で叫んでしまった。
「まさか、でしょ?
あたしが教師スキになるとか自分でも驚きよ」
ふっと笑った千絵先輩。
その瞬間、髪の毛が揺れ、千絵先輩の表情が見えた。
その表情は笑っているのに目があまりに寂しそうで。
俺は立ち上がった。