俺はキミの生徒
『転勤の話があるって…マジ?』
好奇心で聞いてるワケじゃない。
心から、知りたいんだ。
「ないって言ったら…ウソになるかなぁ…」
また歯切れの悪い言い方。
「あたしは…今の学校が好きだから転勤なんて…したくないんだけどね」
柚木ちゃんが持っているグラスの氷が揺れて、コロンと音をたてた。
『…そうなんだ』
それ以外、何も言えなかった。
あの話、本当だったんだ。
ただのウワサなんかじゃなかったんだ。
「ごめんね…修司」
『なんで謝るんだよ』
俺は眼下に広がる夜景を見つめる。
「なんとなく…謝らないと、って思ったんだもん」
『それ、意味分かんねぇーから』
そう言うと柚木ちゃんはなぜか笑った。
笑うところなんて1つもなかったのに。