俺はキミの生徒
「寒いし、帰ろっか」
我に返ったように加奈さんは歩き出す。
そうすると
「うぎゃっ!?」
解けた雪が凍っていたのか、おかしな声をあげて足下をすくわれる加奈さん。
慌てて加奈さんを支える。
「……滑っちゃった」
加奈さんは俺の腕の中で照れくさそうに笑う。
今しかないと思った。
今しか、チャンスはないと思った。
「……あら…た?」
ぎゅっと加奈さんを抱きしめる。
『修司から聞きました。
会社に…元カレがいるんですよね?』
いつだったか、修司が教えてくれた。
加奈さんの失恋話。
加奈さんには秘密だから、なんて言いながら。
『俺じゃ…その人の代わりにはなれませんか?
俺じゃ…ダメですか?』
□ Side 新 終 □