俺はキミの生徒
「修司はさ、聞いた?お姉ちゃんから」
『転勤の話…ですか?』
加奈さんは頷く。
『聞きましたよ、もちろん。
迷ってる、って。
でも今の学校が好きだからできることなら転勤はしたくない、って。』
あの話を聞いたときのことを思い出した。
寒くて、でも胸ん中は温かくて。
「で、それから?
お姉ちゃん、部屋に戻ってきたとき泣いてたように見えたけど、なんかあったんでしょ?
ちゃーんと、説明してね?」
ニヤッと笑う加奈さん。
『いや…柚木ちゃんが言ったんです。
俺が生徒じゃなくなっても、ベランダ越しに他愛もない話、してられるのかな、って。
で、俺が柚木ちゃんがそこにいる限りできるんじゃないか、って言ったんです。
そしたら柚木ちゃん、大袈裟に笑いながら俺がヘンだ、って言うんです。
で、人って疲れすぎるとおかしくなるもんじゃないですか。
だから、あんまり無理するな、って言ったんです。
そしたら柚木ちゃん…泣いちゃって。』
加奈さんは真剣な顔で俺を見つめている。
柚木ちゃんとそっくりな目に見つめられて少し、ドキッとした。