俺はキミの生徒
『これ、どうぞ』
冷蔵庫にたまたま入っていた冷えピタを木下姉妹に渡す。
「さっすが修司ぃ~」
加奈さんはそう言いながら柚木ちゃんの額にまずは貼る。
そして今度は柚木ちゃんが加奈さんの額に貼る。
なんて仲の良さなんだ、この2人は。
「でさ、修司。
さっきから良い匂いがするんだけど…食べさせてもらえます?」
あ…やっぱり、雑煮作ってたことバレてたか。
『じゃあ用意するんで新のこと、起こしといて下さい。
柚木ちゃん、ちょっと手伝って』
そう言う俺の中にはもちろん、ある作戦があった。
「ねぇ…修司ぃ?
用意…するんじゃないのぉ?」
まだ寝ぼけている柚木ちゃんはキッチンからリビングをこっそり覗いている俺の袖を掴む。
そんな仕草にありえないくらいにドキドキして。
今、このまま柚木ちゃんの顔を見ていると抱きしめて
『スキだ』
そう言ってしまいそうで、怖くて。
だから顔を見ずに言った。
『ちょっとおもしろいもん見れるから柚木ちゃんも見たら?』
そんな俺の言葉に素直に従う柚木ちゃんは俺の前にちょこんと座り、ジッと加奈さんと新を見つめている。
きっと、俺はこの目で新のキスシーンの2回目を見ることになるだろう。
ちょっとワクワクしながら黙って様子を見守る。
加奈さんは寝起きの悪い新を揺すってどうにか起こそうとしている。
「あーらーたー!」
バシッと叩いた瞬間、寝ぼけ眼の新が起き上がる。
そして、ちょうど目の前にいた加奈さんをガシッと掴むとそのままキスをした…