俺はキミの生徒
『親父は…レストラン経営プラス料理長』
これでも雑誌に何回か載ったこともあれば
支店もあるほどの有名なレストラン。
きっと、柚木ちゃんも名前を耳にしたことはある…はず。
「へぇ!
すごいんだね!修司のお父さん!」
親父が…すごい、ねぇ…
どうだかな。
親父はまあいわゆる仕事バカで
家庭を顧みなかった。
そのせいで泣いているお袋の小さな背中を何度も見た。
今はだいぶ仕事も落ち着いて家に帰っているらしいが
親父とは気まずくて家を出た。
『……まあそれほどでも』
この話を柚木ちゃんにするつもりはない。
だってまた雰囲気が暗くなっちゃうだろ?
「そうか!
修司が料理上手なのはお父さん譲りなんだね!」
『…かもな』
確かに親父の遺伝子のせいかもしれない。
俺が料理上手なのも
あまり喋らないのも
手先は器用だけど
他ごとは不器用なことも。