俺はキミの生徒
「やっぱりね、どんな事情があろうが教師が生徒に恋愛感情をもつのはよくないことだと思うの。
その生徒が隣に住んでて、
学校で普通に授業して、って今はまだできてるけどきっと、いつか平常心を保ったままできなくなると思うの。
だって、きっとあたしの中にあるのはスキって感情だから。
好きな人相手に授業なんて普通にできない。
だから少し距離を置くべきだと思った。
このキモチが消えるまで、距離置くべきだと思った。
新聞では転勤を渋々受けたことになってるけど、それは違う。
渋々じゃなかった。
そりゃあ、好きな人とは離れたくないけど。
でも、無理矢理にでもこのキモチはなくさないといけないと思うから。
だから、あたしは転勤を決意しました」
俺は柚木ちゃんを見た。
そうすると偶然にも視線が交わる。
柚木ちゃんは少し、照れたように笑っていた。
そしてすぐにその顔は泣きそうな顔に変わった。
「本音を言えば、行きたくない。
けど、言われたんだ、その生徒に。
1度決めたことを曲げるのは良くない、って。
自分で決めたことなんだから最後まで貫けよ、って。
だからあたしはこの学校を辞めます。
みんな、1年間、ありがとう。
みんなに出逢えて本当に良かった。
このクラスで数学を教えることができて、本当に良かった。」
語尾が震えていた。
きっと、柚木ちゃんのことだから一生懸命、堪えているんだろう。
溢れ出す、熱いものを。