俺はキミの生徒
「奪うって簡単に言えるけど簡単にできないよね。
分かってるよ…私だって。」
柚木ちゃんの様子がおかしい。
さっきまであんなに元気だったのに。
「分かってるけど…でも、諦めきれないんだもん」
やっぱり…なんかあったんだ。
今にも泣き出しそうな顔してるよ、柚木ちゃん。
「ずっと…好きだったんだもん。
諦められないよ。
けど…怖くて奪うなんてこともできない」
『柚木ちゃん…?』
俺が声をかけてもその声は聞こえないみたいで。
悲しさが陰を落とす。
それは俺にも伝わってきた。
「あのね…前、したでしょ?慎くんの話。」
ああ…ベランダで柚木ちゃん、言ってたっけ?
慎くんって幼なじみがまだ好きだ、って。
「この間…偶然街であったんだ。
そのときに慎くんの横に…綺麗な女の人がいたんだぁ…」
柚木ちゃんは、机の上に1滴の雫を落とした