三澤斗春とリッパー・ザ・ジャック。
ジャック犯はまず、全員にシートベルトの着用を義務付けた。
勿論、乗客の安全の為じゃない。
乗客がいきなり抵抗してくるのを押さえる為だ。
よく分かってる。
「トイレに行きたい奴は先に言えよ!」
無駄に優しいし。
客室乗務員も含め全員が、席に座らされた。
ジャック犯の男がニヤニヤしながら、話し始める。
「あー、どもども。いや、アテンション・プリーズ。 俺達はリッパー・ザ・ジャック。 心優しいジャック犯だ。 別に危害とか加える気はないから、安心して空の旅を楽しんでくれ」
いやいや、危害を加える気がない割には、めっちゃ返り血を浴びてるんですけど、あの人。
「……へぇ、ジャック・ザ・リッパーならぬ、リッパー・ザ・ジャックか。 ジャック魔のリッパーってとこか?」
「何、冷静に名前の由来を分析してるんですか……」
声を抑えながらも、突っ込む自分がいる。
おそるべし、関西の血。
関西生まれでもないけど。
「犯人が危害を加えないって言ってんだから、安心してもいいんじゃないか?」
「甘い考えです! 中学生の言う『将来、結婚しよう』くらい甘いですよ!」
「お前、過去に何があったんだよ……」
それは、乙女の秘密です。