三澤斗春とリッパー・ザ・ジャック。
男が、客席の奥にある扉から出て行き、やがて覆面の男が現れた。
先程の男より、少し背が低い。
………そういえば、なんで始めの男は覆面をしていなかったんだろう。
自己顕示欲が強いのか?
覆面の男は、そのままコックピットに入って行った。
コックピット内を想像する。
機長になにか、無茶苦茶なことを伝えているに違いない。
要求は何なのだろうか。
そもそも、生きて帰れるのか。
そんな不安を抱えている亜九谷をよそに、三澤はのんびりと客席を見渡していた。
「えーと…………やっぱり一人足して、ちょうどか。 ふぅん、成る程な」
「何してるんですか?」
「ん、現状把握だ。 もう一度、始めの男が見たいな……まぁ、後で見れるか」
そう言って、三澤はシートに深く腰掛けた。
「長倉。モールス信号の本くれ」
「ほーい」
通路を挟んだ向こうから、雑誌が飛んでくる。
「三澤さん、何をしようとしているんですか?」
「いや、暇だから読むだけだが」
何だよ、おい。
期待させるなよ、おい。
お願い、ハゲて。
「そういや、長倉。 頬の出血は止まったか?」
「うんー、結構前に」
「そりゃ、よかった」
世間話かよ、おい。
状況考えてよ、おい。
お願い、後頭部からハゲて。