三澤斗春とリッパー・ザ・ジャック。
ミッサー・ザ・ジャック。
「おい、ぶっ殺されてぇのか!」
扉の向こうから、ジャック犯の怒鳴り声がする。
「ひぃー……」
扉のこっちで、怒鳴られている私がいる。
お願いだから、ぶっ殺さないでください。
ジャック犯から、飛行機をジャックするなんて、非常識すぎるよ。
一生に一度もできないようなレア体験だよ。
レア中のレア。
ブルーアイズだよ。
世界に3枚もないよ。
「これ、下手したら死にますよね……」
拳銃で扉ごと撃たれたら、ひとたまりもない。
「あー、大丈夫だろ。 凶器持ってなさそうだし」
は?
三澤の発言に脳みそが止まる。
いやいや………持って……?
………いや、待てよ。
言われて気付く。
確かに、一度も『拳銃』を見てはいない。
あったのは、音と返り血。
それだけ。
他のもので、代用は可能だ。
「あの返り血、時間が経っても生々しかっただろ?」
「……普通の血なら、変色している」
と、すれば、血のり。
「だな。 それに、操縦室に来る時に、どこにも死体も、血の痕跡もなかった」
『危害を加える気はない』
……本当だったんだ。
ん。
んっ!?
ある考えに、行き当たる。
「あのー……使う気はないけど、本物を持っている可能性もあるんじゃ」
「……………てへ♪」
「てへじゃないでしょ!?」
「その時は、すまん」
「謝られても!」
もしかして私の命は、ギリギリなのかもしれない。