三澤斗春とリッパー・ザ・ジャック。
◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️






「……へぇ、新興拳法ね」


ぱらぱらと教本を読みながら三澤が声を上げた。


「はい、『コテンドー』って言います!」




どっかで似たようなの聞いたことあるぞ……。

と、亜九谷は頭のなかでツッコミをいれる。



襲い掛かってきた少女の名は乱堂(らんどう)ソラ。


彼女いわく『自作拳法の師範代』と、かなりヤバめの肩書きを持つ。


ちなみに、その拳法の普及の為に大陸に渡る為に、国内線で国際空港に行く途中らしい。


ついでに言えば、同じ便で、長倉の隣の席だった。




「………………」

少し気になり、亜九谷は教本を覗いた。

体育の教科書テイストな、分かり易そうな図がいくつか、書かれている。





ただ、

技を受ける側の、

頭の大きさが尋常ではなかったり、
手が常人の数倍の長さであったり、
足が緑色の粘液に包まれていたり、
胴体から昆虫の顔が生えていたり、
無数の毛でもじゃもじゃだったり、
触覚がランダムに突き出ていたり、
していた。


そして、頭痛とめまいがした。

「……乱桐さん。これは、一体?」

乱桐はにっこりと笑い、まっすぐな瞳でハツラツと返答をする。


「宇宙人のタイプ別、対処方です」

「……な、なんで、宇宙人に対して作られてるんですか?」

「それは勿論、来たるべき最終聖戦に向けてです!」




最終聖戦とか言っちゃってるし……。

ぐっと、言葉を飲み込む。

ゆで卵でも飲み込むように、かなり苦労する。



頭痛が。
とめどない頭痛が。
頭が頭痛が。




「ソラちゃん、ソラちゃん! チュパカブラに対してはないのー?」

長倉がぴょんぴょん跳びはねながら聞く。

ここにも頭痛の種が。

ちったぁ、自分の歳を考えろよな。


「もちろん、ありますよー! 別冊付録になりますけど……」


「もちろん、あるの!?」「教本に付録あったら駄目でしょ!」とか、思いながらも、


もはや亜九谷には発言する意志は微塵も残されていなかった。







< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop