三澤斗春とリッパー・ザ・ジャック。
そして、なんだかんだで、チュパカブラの威信を背負った長倉と、乱桐は一戦を交えることとなった。
「ふっ、僕のチュパカブラの再現率を侮ってもらったら困るね」
いや、再現も何も、出現してないから。
声に出す気にもなれず、亜九谷はぼんやりと、眺めていた。
そういえば、結局旅行先はどこなんだろう。
「ソラちゃんなんか、指先一つで血祭りだよ」
「殺す気っ!?」
つい、声を出してしまう。
「いえ、舌だけで結構です」
「タオパイ!」
気が付くと、亜九谷は二度も突っ込みを入れていた。
か、体が勝手に……。
亜九谷の反省をよそに、
「ちゅぱー」
長倉が、おそらくチュパカブラの鳴き声を再現した。
そんなポケモンの鳴き声じゃあるまいし。
そして、カマキリみたいなポーズを取る。
あ、よく分からないけど、なんかチュパカブラっぽい。
亜九谷は素直にそう思った。
「レーディー、ファイッ!」
レフェリー気取りの三澤の掛け声で、再現チュパカブラと対宇宙人拳法という今だかつてない感じの試合が始まった。
深夜放送でやれ。
生でやるな。
「さぁ、どこからでも掛かってきてください」
「ちゅぱー?」
「それでも、南米の化け物ですか!」
「ちゅぱぱ!」
なんか、シュールだ。
「…………」
「…………………」
沈黙。
「……………」
「………………」
沈黙。
「こ、これは、相手の行動の読み合い!? なんて高度な戦いなんだ……次に動いた時が、決着の時だ」
そんなわけ、ないでしょうよ。
亜九谷は、未だに引かない頭痛を吐き出すかのように、嘆息した。