優しい魔王と優しい勇者の悲しいお話
「彼は本当に優しい人だった…本当は、誰も殺したくなんかなかった…!誰も傷つけたくなんかなかった…!でもっ、それ以上に辛かったんですよ…彼の能力はただ単に記憶を読み取るだけじゃない…その人の気持ちをそのまま自分のことのように感じるの…っ!彼は母親の苦しみを感じ取ったから…だから、もう止まれなかった…っ!憎しみが強すぎて、自分では抑えることができなかったっ!私とあの人は似ているから、だからわかった…私でもきっとそう思うから…止めてくれって…そして…」



殺してくれ…



少女は瞳に涙をため、悲しみで顔をゆがめながら、思いの全てをぶつけるかのように叫びました。



魔王の思いの分まで…
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