優しい魔王と優しい勇者の悲しいお話
少女の口から、乾いた笑いが漏れました。



「私と彼は似ているって言いましたよね…なのに、私が魔王にならなかったのは私が何も知らなかったから…彼一人が辛いことを全部一人で背負っていたから…彼…最後に私になんて言ったと思います?」



こらえていた少女の瞳から、涙が零れました。



『…ありがとう…ごめんな…』



「彼には私の最後の攻撃が見えていた…よけようと思えば、簡単によけられた。でも、そうしなかった…最後の瞬間、彼は笑ったんですよ…昔みたいに…その時、思ったんです…次は私の番だって…次は私が思いを果たす番だって…彼は私が真実を知れば、必ず自分と同じ道を歩むって分かってた…だから私に何も言わなかった…でも、知ったから…だからもう、彼だけを悪人にはしない…私も、一緒よ…」



次の瞬間、少女の剣が王様の喉元を貫きました。
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