パパ
だけど、祁依子のお母さんの口添えのお陰で産むことをお父さんも許した。
お父さんとしては、中絶をするにはもう危ない時期に入った、娘の身体の事も考えての決断だったんだろうね。
それから直ぐに、祁依子は高校を自主退学。バイトを始めたよ。
本来なら安静にしているべきなんだろうけど、高校中退で子持ちなんて、就職口は無いにも等しい。
働けるうちに自分で、お金をためたかったらしいよ。
「まぁ、就職なんかしないで、俺の嫁さんって道もあったんだけどね。俺の迷惑になるからって、一度目のプロポーズは見事に振られたよ。」
今度は、普通に頭を掻きながら苦笑いをするパパ。
「それで、俺が高三のうちに舞依子が生まれたんだよ。」
最後の方は、結構簡単にまとめられていた。
「…パパはさ、最初に舞依を見た時どう思ったの?」
パパの話を聞き、一番最初に出てきた言葉がコレ。
一番答えを聞くのが、怖い質問。
身体を固くするアタシに、パパはニッコリと微笑んで答えた。
「可愛いなぁーって、この子を育てたいなぁーって、いとおしいって思ったよ。」
パパの優しい笑顔を見ていたら、今度こそ本当に温かい涙が流れてきた。
「…パパ……」
「舞依子は、祁依子のお腹にいる時から、俺の大事な大事な子だよ。」
そうやって、テーブルの向かい側から、大きな温かい手で泣きじゃくるアタシの頭を撫でてくれた。
「それに、皆の舞依子への接し方を見てたら、わかるでしょ?皆、舞依子が大好きなんだよ。」
「……ありがとっ」