白銀の景色に、シルエット。
夏と言えば。




 この日射しで目玉焼きが作れそうだ。これを利用すれば、料理で取られるガス代が浮くんじゃないかと考えるのは、俺だけじゃないと思う。

 蝉の鳴く声がより暑さを感じさせる。

 夏バテでだらけている俺の横で、一人元気に冷やし素麺を頬張る彼女。

 カランカランと氷が皿と擦れ合い、これまた夏を感じさせる。


 何でこんな元気なんだ…。


「ほらほら、君も早く食べなよ。氷溶けちゃうぞ」

「……あのね、さっきから言ってるデショ」

「夏バテが何さ。情けない。一度思い切って食べないとキリないんだから」

「情けなくて結構デス」

「全くもう」


 彼女は俺の説得を諦め、ズルズルと素麺を啜った。

 チリンチリンと鳴る風鈴の音だけが唯一、涼を運んでくれる。


「今日は久々のデートの日でしょー」

「外には絶対に行かないかんな」

「ちょっと! 今7月だよ?! 夏だよ?!」

「だから何…」

「夏と言えば青! 青と言えば空と海!」

「だから?」

「遊びに行こうよー! 海水浴とかさー」

「ヤダ」

「もう、最悪」
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