白銀の景色に、シルエット。
カフェモカ色





 買い物に付き合わせた昼下がり。

 お礼代わりに奢った小さな喫茶店のありきたりな味の珈琲を彼は綺麗に飲み干した。

 買い物袋をぶら下げて、靴で擦れて痛む足を庇いながら歩く私の横で、飄々とした様子で浮き足立った彼。

 ふとした拍子で立ち止まったのを、私は不思議に思いながら見つめた。

 そして――ヒトコト。


「カフェモカ色だ」


 珍しく着たロングスカートを指差す。


「下がカフェで上がミルク。ね? カフェモカ色」


 さっき飲んだカフェモカを色に例えるところが、何とも彼らしい。

 けれど今の私にはそんな余裕は無くて。


「そんな事言ってる暇、考えてる暇があるなら荷物くらい持ってよ」


 靴擦れが痛い。見なくても分かる。きっと水膨れが出来てるんだ。

 私がよく靴擦れする事を知っているくせに、知らん顔してそそくさと逃げるようなこの男を、私は何故好きになったのだろう。


「そんな靴を履いて来る君が悪い。少し辛い思いをして懲りると良い」

「殺生な!」

「僕の前で見栄張ってそんな靴を履かない。良いね?」

「……ばかやろぅ」


 本当に何も分かっていない。

 靴擦れがどれだけ痛いかだとか、荷物の重さだとか、私が彼を好きな事だとか。

 そう、いつまで経っても。


「女の子なんだよ。少しでも可愛くしたいでしょ」


 何だか哀しくなって顔を背ければ、彼は私の頭をわしゃわしゃっと撫で回し、重い方の荷物を取った。


「自然体で良いじゃん。僕もみんなも、ありのままの君が好きなんだからさ」


 ほんわかした彼の笑顔に、私は真っ赤に赤面。嬉しさと恥ずかしさが身体中を駆け巡る。


「あ、イチゴ色だ」


「ぅ……うるさ~い!!」


 一枚も二枚も上手な彼に、私はまだまだ勝てそうない。





*End...09/06/17*


――――――――――
 何故こんなグダグダになったのかと言いますと、友人から「カフェモカ色!」とかいう難しいお題を貰ったからです。
 小説は若干のリアルとフィクションですよー!
 この日、私が来ていたロングスカートを見て友人が言った事から全ては始まりました(笑)
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