白銀の景色に、シルエット。
亡骸





「ねぇ…まだ赦してくれないの?」


 夜よりも深い闇に落とされた私は『彼』に問う。

 また、返事は返って来ない。沈黙を決め込んでいる。

 こんな状態が続いて、もうどのくらい経つのだろう。

 一ヶ月…一年…十年…。分からない。

 私が置かれてる身の上は不規則な生活を強いられ、もうまともな理性や意識は働いていない。

 『彼』の気が向いた時にだけ睡眠を赦され、食事が与えられる。

 眠ったり食べたりしている時以外にする事は、何もせずただ生きているだけ。否、生かされている。

 いっそ殺してと喚いたのは、いつの事だったか…。

 時間感覚が狂ってしまって、もう分からない。


「赦す? お前は私に何かしたのか」

「してないわ。してない筈よ。だって私は…今まで…誰にも迷惑を掛けずに生きて来たわ…」

「本当にそうか? 全ての声が聞こえる訳でも無いのに断言するのか」

「あ…ぁ…ごめんなさぃ…。赦して下さい……」


 元々、私は人より少し裕福な暮らしをしていた。

 お金に困る事は無かったし、家族仲も良かった。

 幸せだったのに壊れてしまった。

 そう、壊れてしまったの。――どうして?


「お前は赦されない。お前の罪は一生を賭しても消える事は無い」

「私の罪…?」

「誰もお前を罰せない。だから私が代行し、お前に罰を下す」


 底無しの漆黒の世界。

 『彼』は私を、また明日も生かす。


「生きる事。それがお前への罰だ」


 愉しげにくつくつと笑う『彼』の声が、閉ざされた視界の奥で響いた。





*End...09/08/25*


――――――――――
 彼女の犯した罪とは……『彼』とは誰なのか?
 謎を残しまくってのエンディングです。
 気が向いたら、もう少し掘り下げた続編を書きますねー。
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