白銀の景色に、シルエット。
「華、アンタずっとそうやっとくの?」

「あの家にいたくないから」

「ちょっと我慢するとかさ」

「史依には分かんない。今のあたしのつらさなんて」


 優しくしてくれる史依に八つ当たりした。明らかにあたしが悪い。史依は心配してくれてるだけなのに。

 分かってるのに、素直に謝れないあたし。


「分かんないから、分かりたいって思う」


 史依のまっすぐな言葉が、心に届いた。凄く凄く嬉しくて目が潤む。


 史依、何でアンタはあたしを泣かすのが巧いの?


 昔っからそうだった。


 史依の言葉はいつも強くて優しくてまっすぐで、よく私を泣かせた。


「史依……」

「ん?」

「ありがと」


 小さくて涙声になったあたしの声は、物凄く情けなかった。

 恥ずかしくてそれ以上黙ったあたしを、史依がぎゅうっと抱き締めた。いろんな事から守るみたいに強く抱き締めてくれる史依が、本当に好き。


 いつもワガママ言って困らせてばかりで、素直にそんな事言えないけど。


「華が好きだから、傍にいんの。礼は要らないから」


 うん。ありがとう。――でも、ごめんね。


「あたしも好きだよ、史依」


 史依とあたしの“好き”は違う。知ってるんだ、あたし。

 史依はあたしの事、恋愛対象としての、好き──なんだよね。


「華は私が守るから」


 史依とは違う“好き”だけど、あたしの一番はいつも史依。

 嫌いだった熱だって、史依の心地好い熱のお陰で、嫌いじゃなくなった。

 それだけは、確かなんだ。


 だから史依、アンタがあたしの一番でいる限りは、こうしてあたしのヒーローでいてね。





*End*
≫あとがき!
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