白銀の景色に、シルエット。
 ──エゴはやめてよ!!

 貴方達に私の苦しみなんて分からない!


 手が動かなくなった事がある?

 足が動かなかった事はある?


 私じゃない貴方達に、私の苦しみなんて分からないでしょう?!

 勝手な事ばかり言わないでよ!


 何にも出来なくなった、ただ生き続けるだけの人形に成り下がった私によくそんな事が言えたよね?


 恋愛だってまだしてない。やりたい仕事だってあった。

 幸せな家庭を持つ事を、小さい頃から夢見てた。


 それももう叶わないっ。


 苦しみばかりの人生を、人を羨むばかりの人生を、私に歩んで行けと言うの?


 残酷すぎる。


「ふっ……ゔ……っ!」


 晴れ渡った夏の空が、嫌になるほど青かった。


 涙で歪んでも、空は色も変わらずそこに在った。

 伸ばしたくとも伸ばせない手。掴みたくとも掴めない空。


 もう、うんざりだった。


 私はこうやって一生、届かない空に憧れるだけの毎日を送るんだ。

 みんなが見過ごす些細な空の変化すらも心に留めて、切なく苦しくとも広い空をじっと見つめて生きて行くんだ。


 普通の人を羨んで、そうやってずっと──。


 拭えない涙は、止めどなく流れていった。





*End*


――――――――――
 青く広がる空を憎らしく思った事はありませんか?
 私は少しだけ身に覚えがあります。

 挫けた時、空を見上げると~…って言葉をよく耳にします。
 私はあまりそうだと思えない派です。
 青く広がる空だからこそ遠くて、掴む事は出来なくて、尚更落ち込んで。
 そんな思い出があります。

 メジャーな空のイメージを覆すような小説を書きたくて、こうなりました。

 主人公の心情は若干、実話が入ってます。
 遺伝性の貧血持ちで病気になった時、親にあんな風に思いましたね。
 この痛みは二人には分からない!って。両親は私以上につらかっただろうに。

 そんな昔の事を思い出しながら書き上げた作品です。
 ご拝読ありがとうございました。


by 08ー08ー11.
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