白銀の景色に、シルエット。
【side十月】
あぁ、うぜぇ。
湖が行こうなんて言わなきゃ一生来ねぇよ。ったく…。
「うわ、すっご~い!」
相変わらずガキな湖。目を輝かせて辺りを見渡している。
どこもかしこもカップルばかり。
あ~イチャこきやがって。見てるこっちが恥ずかしい。
「大丈夫? 十月くん」
小絃……お前、本当に人の事よく見てるよなぁ。
「なんとかな。けどよ、見てるとイライラしねぇ? イチャこきやがって」
「くす。十月くんらしい」
可愛いよなぁ、小絃。ちまちましてて笑顔がよく似合って。
……それに引き替え。
「何、眼飛ばして。文句でもある?」
湖はいつもこんな調子。もう少し可愛い事が言えないのか、お前は。
ったく…。本当に、何でこんなガキに惚れてちまったのか。
小絃の方が断然可愛いだろ。納得いかねぇ。
身内贔屓みたいなもんか? だとしたら最悪だ。悪夢だ。夢なら覚めろ。
大して可愛くもないガキに惚れてるなんて。人生最大の汚点だ。
【side暦】
「ほら、これだよ! 噂のミラーハウス!」
湖は子供のようにはしゃぎながら手招きする。
「湖ってばー。騒ぎすぎ」
小絃ちゃんは少し呆れた顔をして、溜め息を吐く。けれどすぐ笑顔になる。
小絃ちゃんは本当によく湖の面倒見てくれてる。子どもな湖と付き合っていられるのは彼女くらいだ。
「じゃ、行くよー!」
「迷子になんないでね、湖」
「迷子になる前提?! ひどっ」
痛い所を突かれた湖は頬を膨らませる。その隣で十月が腹を抱えて笑う。
「何笑ってんのよ、十月!」
「いやー、ナイス小絃!」
「ちゃんと答えなさいよっ」
「やーだね」
「何をぅ?!」
何だか、本当に良い関係だよなぁ。
「何ぼーっとしてるの、暦! 一緒に行こ?」
湖は俺の腕を掴んで笑う。
気づくと、十月と小絃ちゃんはもう入っていた。
手を引かれるまま、中へ誘われた。