白銀の景色に、シルエット。
【side小絃】
「良かったぁ。いつの間にかはぐれちゃってたから、びっくりしちゃって」
私は慌てて十月くんに駆け寄った。
十月くんは少しだけ安心したような顔をして、すぐに不安そうな顔をした。
心配なんだよね、湖の事が。
私達でさえはぐれちゃったんだから、湖達がはぐれている可能性は高い。寂しがり屋な湖の事だからきっと不安がってる。
十月くんはそれが心配なんだよね。分かってる、分かってるよ。ずっと知ってたよ。
不器用な十月くんの、長い初恋。
でも知ってるからって。分かってるからっていう理由で、諦めたくはなかった。ちゃんとぶつかって終わりにしたくて。
だから、聞いて。私の気持ち。
お互いが前に進む為に。
「十月くん。少しだけ聞いてくれる?」
「へ? あぁ、うん」
「はっきり言うね」
「うん」
頑張れ、小絃。伝えるんだ、ちゃんと。
後悔しない為に。
「私は……十月くんの事が好きです」
「こ、小絃?」
「冗談じゃないよ」
「……ごめん」
「うん、大丈夫。謝らないで。湖が好きなんでしょ?」
「何で知って…?!」
「十月くん、私といても湖の方ばかり見てる」
「小絃……」
「告白しないの?」
「出来るわけないだろ、そんな」
「私は出来たよ? 私の大事にして来た想い、ちゃんと伝えたよ」
ごめんね、十月くん。きつい事言うけど、十月くんには一歩を踏み出して欲しいの。
私の為に。貴方の為に。
「頑張って、十月くん。貴方なら出来る」
あぁ、泣きそう。
でもあと少し。あと少しだ。
頑張れ、小絃。
「可能性があるのなら、それに賭けてよ」
「小絃……」
「私、先に行くね」
私は十月くんの横を擦り抜け、先へ進んだ。
ぽろ…。涙が溢れて来る。
もう我慢しなくてもいい。私は充分頑張った。
新しい恋を探そう。
十月くん、幸せになって。