白銀の景色に、シルエット。
樹はその時医大の一年生で、遠く離れた町で一人暮らしをしていた。
兄のように慕い、妹のように可愛がられていた私。心配して様子を見に来てくれた樹に会って、その時初めて泣いた。
もう大丈夫だ。傍にいるから。
抱き締めてくれた樹の温もりが優しくて、父のようで安心して。
それから樹は私を引き取ってくれた。
父の実家から、仕送りだけはきちんと送られて来る。
あの日から五年が過ぎ、ある程度の感情を面に出せるようになった。
時々、意味もなく大泣きしたりするけど。樹は何も言わず優しく受け止めてくれる。
だから私は今こうして、この場所に在る。
樹が受け入れてくれたから。
言葉では言い表せないくらいに、感謝している。
「花笑。まだ、学校へは行けない?」
本来なら私は中学三年生。でも行っていない。
外が怖い。外に出られない。樹が一緒じゃなきゃダメ。
いくら感情が面に出せるようになったからって、昔の傷は癒えていない。
未だに大人に対しての恐怖感は消えない。
「無理強いはしない。でも、ある程度の知識はつけておかないと。社会に出たら大変だよ」
「勉強なら樹から習ってる。“社会”には出たくない。大人がたくさんいる」
「花笑…。ずっと一緒にはいられない。そしたら花笑、どうするの?」
「やだ。樹とずっと一緒にいる」
「だからそれは」
「だめ? 樹は、迷惑?」
「……そんなんじゃないよ。意地悪で言ったんじゃないんだ。ごめん。俺はずっと花笑の傍にいるから」
「うん」
笑った。
私が笑ったら、樹も笑う。それがとても嬉くて。私はまた笑う。
ねぇ、神様。いるとするなら、私の唯一の願いを叶えて下さい。
最初で最後のお願いです。聞いて下さい。
どうか。どうか。樹とずっと一緒に。
樹だけは、失わないように。
*End*
――――――
大人に押し潰されそうな
子供達。
既に押し潰されてしまった
子供達。
『私達に居場所は
ないのですか?』
小さな小さなSOS。
貴方には、聞こえませんか?
兄のように慕い、妹のように可愛がられていた私。心配して様子を見に来てくれた樹に会って、その時初めて泣いた。
もう大丈夫だ。傍にいるから。
抱き締めてくれた樹の温もりが優しくて、父のようで安心して。
それから樹は私を引き取ってくれた。
父の実家から、仕送りだけはきちんと送られて来る。
あの日から五年が過ぎ、ある程度の感情を面に出せるようになった。
時々、意味もなく大泣きしたりするけど。樹は何も言わず優しく受け止めてくれる。
だから私は今こうして、この場所に在る。
樹が受け入れてくれたから。
言葉では言い表せないくらいに、感謝している。
「花笑。まだ、学校へは行けない?」
本来なら私は中学三年生。でも行っていない。
外が怖い。外に出られない。樹が一緒じゃなきゃダメ。
いくら感情が面に出せるようになったからって、昔の傷は癒えていない。
未だに大人に対しての恐怖感は消えない。
「無理強いはしない。でも、ある程度の知識はつけておかないと。社会に出たら大変だよ」
「勉強なら樹から習ってる。“社会”には出たくない。大人がたくさんいる」
「花笑…。ずっと一緒にはいられない。そしたら花笑、どうするの?」
「やだ。樹とずっと一緒にいる」
「だからそれは」
「だめ? 樹は、迷惑?」
「……そんなんじゃないよ。意地悪で言ったんじゃないんだ。ごめん。俺はずっと花笑の傍にいるから」
「うん」
笑った。
私が笑ったら、樹も笑う。それがとても嬉くて。私はまた笑う。
ねぇ、神様。いるとするなら、私の唯一の願いを叶えて下さい。
最初で最後のお願いです。聞いて下さい。
どうか。どうか。樹とずっと一緒に。
樹だけは、失わないように。
*End*
――――――
大人に押し潰されそうな
子供達。
既に押し潰されてしまった
子供達。
『私達に居場所は
ないのですか?』
小さな小さなSOS。
貴方には、聞こえませんか?