白銀の景色に、シルエット。
プレゼント
街を彩るイルミネーション。どこからか聞こえて来るクリスマスソング。
あぁ、そろそろクリスマスか。どうりで賑わっている訳だ。
平日は早めに帰宅し、休日も滅多に外へは出ない為に全く気づかなかった。
彼女が外へは出たがらないから、賑わうイベントにも気づかない事が多い。
それでも何とも思わなかった。彼女が傍にいてくれるだけで幸せを感じる。
最近、自分の心の歪みに気づき始めた。
昔は彼女の幸せを一番に考えていた。その為には外へ出して、たくさんの事を吸収させなければと。あれこれ試行錯誤していた。
今は彼女の『外が怖い』と言う言葉を聞く度に安堵する。
あの部屋に閉じ込めておきたい。自分だけのものに、したい…。
幼く可愛かった幼なじみの女の子は、知らぬ間に綺麗な女性に変わっていた。
このままでは彼女の幸せを何より願っていた俺自身が、彼女の幸せを潰してしまう。それだけは嫌だ。
彼女につらい想いはさせたくない。
これまでに一生分に相当するほどのつらい思いをして来たのだから。これからは、泣いた分より更に多く笑っていて欲しいから。
「花笑。そろそろクリスマスだね」
「ん」
花笑は傍で寝転びながら答える。
「プレゼント、何がいい?」
「…………」
「去年は本だったな。今年も本がいい? 花笑はお菓子作りが好きだから、レシピ本とか」
「…………」
「花笑?」
花笑の長い髪に触れる。
ここに来た時はとても短かった。五年もなると、腰の辺りまで伸びた。
長髪は傷みやすいとよく言うが、花笑の髪はサラサラで落ち着いている。
俺は花笑の髪を触るのが好きだった。
「花笑。髪、伸びたね。切ってあげようか?」
あまり自信がないけれど。この美しい髪を他の誰かになんて触れさせたくない。
「花笑」
相変わらず、返事がない。
時折り、こんな風に黙り込む事がある。そういう時は何も言わず黙って傍にいてやる。
それが、花笑にとって一番安心出来る状態らしい。