白銀の景色に、シルエット。
 ……そうだ……。

 彼が生きる事を望まなかったのは、私に生きていて欲しかったからだ。死神としてでも、存在して欲しかったから。

 私はそんな彼の想いを踏みにじろうとしていた。もう少しで彼の命を無駄にするところだった。


 私は啓介に何もしてあげられなかった。

 それなのに最期の願いさえ聞き入れなかったら、いつか会えた時、会わせる顔がない。


 ごめん、啓介。


 嫌だとか無理だとか、そういうのは違う。限りあるまで生きるんだ。


 それこそが彼への償い。


 ゆっくりと深呼吸をした。


「……よし」


 一度、手放した鎌を再び手にする。


 啓介は私が死んでも後を追わなかった。精一杯生き抜いた。

 私が耐えきれなくなって逃げる訳にはいかない。

 大丈夫だ、頑張れる。次会えた時に胸を張って頑張ったと言えるように。


 最期まで、在り続けよう。


*End*


――――――
人の魂を狩る“死神”

ある話では、冷酷な死神。
ある話では、慈悲深い死神。
両極端な死神談。

それでも、
死を恐れる前に精一杯生きて。
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