白銀の景色に、シルエット。
 ──羽名は俺に助けを求めなかった。いや、求める事が出来なかったんだ。


『私が悪いから』

『いじめる方にも、それなりの理由があるから』


 そう言い続けて、俺の助けを拒んで、挙句の果てに自殺した。


 羽名は……羽名は……。


「大丈夫。安心して」


 満を抱き締める。


「け……すけ…?」

「安心した?」

「……うん、ありがと」


 二週間が経過した頃だった。















 満との交際を始めてから、約一ヶ月が経とうとしている。


 あと三日……あと三日で、全てが終わる。俺の復讐計画は幕を閉じる。


 そう、満の死によって。


「もうやだよ、啓介! 耐えられない!」


 満が抱きついて来る。

 月明かりの空の下、人気のない公園。二つの影だけが伸びている。


「しっかりしろよ、満。大丈夫だって」

「何が大丈夫なの?! この一ヶ月間、ずっと無言電話に手紙…突き落とされかけた! 頭がおかしくなりそう…!」


 羽名だってそうだった。気が狂うほどに苦しんで死んだ。


「もう嫌!!」


 ───はは……っ。

 そうだ、もっと苦しめよ。満の苦しむ顔が悦になる。


「じゃあ、別れる? 俺がいて苦しいなら」

「いや! 啓介がいないと嫌…っ」


 ……ったく。本当にワガママな奴。


「どうすればいいんだよ」


 はぁっと大きな溜め息を吐き、尋ねた。もちろん、わざとだ。

 満は恐る恐る俺の顔を覗き込んで来た。殴りたくなる衝動を抑え、平然を装う。


「私の事、好き?」

「好きだよ」

「愛してる?」

「愛してるよ」

「じゃあ、キスして」


 そんな事くらい、いくらだって。復讐の為だと思えば簡単だ。

 そっと、満に口付けた。躊躇いなどなかった。

 全ては復讐の為。満を死に追いやる為。

 その為なら俺は、何だってやる。例え、羽名とのキスを忘れる事になろうとも復讐の為ならば。





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