白銀の景色に、シルエット。



 今日は、羽名の月命日。そして満の命日となる日。


 朝からいつも以上の嫌がらせをした。

 十分置きの無言電話。何十通も送りつけた手紙。


 満から何度も電話やメールがあった。満を追い詰める為、それは全て無視した。


 そして、夜8時。満が一人暮らしをしているマンションを訪ねた。

 呼び鈴を鳴らし、出て来るのを待つ。

 ドアが開くと同時に、勢いよく満が抱きついて来た。


「どうして電話に出なかったの?!」

「ごめん。ケータイ、忘れて外出してたから」

「いつもよりひどいのに!」

「満、とにかく中へ入ろう」

「ん……」


 満を中へ誘導し、ドアを閉め、鍵とチェーンをかける。逃げ出せないように。


 震える満をソファーに座らせた。


「珈琲、淹れるよ」


 台所へ向かおうとした俺の裾を、満が必死に掴む。


「お願い、傍にいて。離れないで」

「満」


 羽名…お前もこんな風に怯えていたんだな。毎日怯えて。

 俺、何も出来なかった。


「何とかして、啓介!」


 そうだよな。羽名も、そう言いたかったよな。


 なのに。


「啓介…!!」


 言えなかったんだよな。コイツらのせいで。そうなんだろ、羽名。

 でも、もう大丈夫だ。俺が全てを終わらせる。安心していい。


「分かった。俺が何とかする。……犯人を突き止めよう」


 満は驚いた顔をして、俺を見る。


「どうやって」


 不安そうに俺の手に触れて来る満。


「まず、満に恨みを持っている奴」

「え?! 私に恨みを持っている人なんて」


 心底驚いた顔をする満。

 いない、とでも言いたいのか?

 最低だな。自分のした事を棚に上げて。


「至宝 羽名」

「───!!」

「……の、恋人とかな」

「羽名に恋人?! 聞いた事ないよ、そんなの!!」


 当たり前だろ。中学時代のごく僅かな親しい奴にしか言ってないんだから。


「大体、何で羽名の名前が出て来るの!」

「満がいじめた子だから」

「!……啓介、何で知って…」
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