白銀の景色に、シルエット。
「全然書けなくて居残りさせられてたら、草津君言ったよね? 『大人になったら何したい?』って」


 そう尋ねたら、入江は悲しそうな顔をした。

 お母さんが公務員になりなさいって言うから、そう言って。だから俺はまた訊いたんだ。

『ほんとにしたい事は?』って。

『絵が描きたい!』凄く目を輝かせて、入江は答えた。


『じゃあ、書けるだろ?』

『うん! ありがと、海君』


 入江は無邪気に笑って、鼻唄を歌いながら書き始めた。


『なぁ、涙。約束しようぜ』

『約束?』

『そっ。俺は絶対野球選手になる、涙は画家になる』

『……うん、約束!』


 あぁ、懐かしいな。

 俺があんな軽弾みで言った言葉を、ずっと覚えててくれたんだな。


「私、あれからずっと頑張ってる。絶対に夢を叶えようって。だから、両親とも毎日ケンカしてるの」


 ケンカ?
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