白銀の景色に、シルエット。
 そんな毎日を過ごしていた私に、ティアは気づいてくれていたの。草津君より早く来た日、ティアは私を見上げて言った。

 一緒に話をしませんかって。

 もう凄く嬉しくて、ほんの少しの時間だったけど、たくさんの話をした。

 楽しかった。

 それからちょこちょこ二人で話をしたの。

 でも、あの日…。あの日は、ティアが眠っていたから、こっそり眺めていたの。

 そしたら草津君が来て。首飾りを外して駆けて行って。ティアが目を覚まして。

 慌て出した。でもそれも束の間。すぐに落ち着きを取り戻した。

 そして私を見上げて、手招きしたの。

 ここに来てって。私は急いでティアの元へ向かった。

 会った早々、ティアは、カイをお願いって言ったの。何を言っているのか、全く分からなかった。

 でも、時間がないって焦るティアを見ていたら、深く追求する事は出来なかった。

 分かった。そう伝えるしかなくて。

 でも、何故それを私に?

 ティアはそんな私の疑問を察したのか、笑顔で答えた。

 ティアっていう英単語を調べてみて。私と貴女は、同じだから。だからこそ、貴女にカイの事を頼みたいの。

 またしても、ちんぷんかんぷんだった。何が同じなのか。何故頼むのか。

 全ての意味が理解出来なかった。

 ちょうどその時、草津君が戻って来て私は近くの岩場に身を隠した。

 そして二人のやり取りを聞いて私は、ティアの言った意味が理解出来た。

 あぁ、ティアはいなくなってしまうんだなって。


 さて問題です。ティアは英語で書くとtear。何と訳せるでしょうか。


 正解は、涙。そう、名前。

 ティアが言いたかったのは、この事だったの。

 彼女、ティアと。私、涙は。同じ名前。そして同じ気持ち。それをティアは知っていたんだね。

 私は草津君が好きで、ずっと見てたから。


 ……驚いた?
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