白銀の景色に、シルエット。
野望





 貪欲な人間は、有名な物や絵を見て素晴らしいと言う。この上ない素晴らしさだと。


 本当に、この上ない素晴らしさ?

 冗談。そんな事を言ってるのはお前らだけだ。


 田舎から出て来た奴に、その素晴らしい絵を見せてみろ。きっと素晴らしいの一言は言わない。

 そういう奴らこそ、本当に素晴らしいんだ。


 何千万…何億万する絵だか知らねぇけどな、そういう奴らからしたら、価値のつけようがない。

 本当に素晴らしいと思えば、心から感動出来る。


 何故だか分かるか?

 奴らは本当の、金では買えない素晴らしさを知ってるからだ。


 いっぺん、野山や川や海の綺麗な田舎へ行ってみろ。

 目を閉じてゆっくり深呼吸するんだ。そう、落ち着いて…ゆっくり。

 耳を澄ませてみろ。

 何が聴こえる?


 山や花、川や海、空や雲の命のざわめき。

 そこに住む奴らは、この命のざわめきの大切さや素晴らしさをこの上なく知ってるんだ。


 無理に理解しろなんて言わない。誰にだって考えはある。

 俺の考えを嘲笑う奴もいるだろう。

 でも俺は、『生きている事』が最高の素晴らしさだと思う。


 この切羽詰まった世の中で叫びたい。


『命を大切にしろ』


 馬鹿にされてもいい。

 これが、もうすぐ命が尽きる俺の…たった一つの野望。





*End*


――――――
貴方の考えは時に
貶される事もあるでしょう

それでもどうか自身で
否定はしないで下さい
成長過程で出した立派な理論

大切にしてあげて下さい
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