白銀の景色に、シルエット。
 涙なんて流さない。流してなんかやらない。

 だって私は哀しい訳ではないから。隣に居ない貴方を想って…寂しさを纏うだけ。

 ほら、ね。涙の要素なんて何処にも無い。


 時が経つのは残酷で、生きとし生けるもの達を無情にも変えていく。

 ――私も、随分と変わってしまった。


(もう、此処には来ないよ。いいでしょう?)


 私はもう、貴方の知っている私じゃない。

 あの頃の私は、少なくとも人任せに物事を決める人間では無かったはずだ。


(おめでとう…って喜べないよな、やっぱ。こんな形でごめんね)


 自分で決めるはずの大切な結婚を、私は両親に委ねてしまった。

 私らしくないと貴方は言うだろう。でもね、これが今の私なんだ。


(変わってゆくよ。人は皆)


 生きていれば、貴方もきっと。


(だから……)


 もう一度、別れの日の言葉を貴方に捧げよう。

 会える日なんて二度と無いと分かっていながら。


「またね、」


 ――私の愛した貴方と、貴方を愛した日々に。





*End*
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