ぎゅっとして
「・・・・・いなくなっちゃった・・・・・」


一瞬だけだったから、本当にそうだったかもわからない。


「誰?」


「うん・・・・・知り合いなんだけど、もう何年も会ってないから・・・・・」


もう、最近では思い出すこともなくなって来たけれど・・・・・


決して忘れたわけじゃない。彼のことは・・・・・


「優衣?」


慧の心配そうな声にはっとする。


「あ、ごめん。何でもないの。行こう」
 

そう言って笑って見せると、慧はちょっと気になるようにあたしのことをじっと見てから、肩をすくめ・・・・・


「ん」


と頷いたのだった。


 
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