ぎゅっとして
杉浦さんの相変わらず優しい笑顔が、今はぞっとする程恐いものに感じてしまう。


「ずっと、君が好きだったんだよ」


「お姉ちゃんのことは―――」


「もちろん好きだったよ。君のお姉さんだからね。だから僕は、彼女と結婚しようと思ったんだ。彼女と一緒になれば君ともずっと一緒にいられる。なのに―――彼女は突然結婚しないと言い出したんだ。ひどい話だと思わない?せっかく君と一緒になれると思ったのに・・・・・」


変わらぬ、抑揚のないしゃべり方。


あたしはその場から立ち上がろうとしたけれど、思うように体を動かすことができなかった。


「それだけじゃない・・・・・。彼女は、僕が君に会いに行くことも拒んだんだ。僕は君のことを本気で愛しているのに・・・・・二度と会わないでくれって。泣きながら言われたよ。女の涙はずるいよね・・・・・彼女は、卑怯だよ」


「―――お姉ちゃんのことを、悪く言わないで」


「ああ、ごめんよ。君にとってはたった1人のお姉さんだものね。でも、僕にとっても・・・・・君はたった1人の君なんだよ。わかるだろう?」
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