ぎゅっとして
「だけど―――少なくとも、もう優衣には近づくことないと思うから」


そう言って、章はあたしを見て少し笑った。


「これで心置きなく慧さんと付き合えるだろ?」


「な―――何言ってんのよ、生意気に!」


「はは、赤くなってやんの。わりいけど俺、これから友達と約束あるから行くわ。慧さん、優衣送ってやって」


「ああ」


そうしてとっとと行ってしまう章の後姿を見送って。


あたしは、小さな溜め息をついた。


そんなあたしの頭を、慧の手が優しく撫でる。

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