ぎゅっとして
「俺を寝かしつけた後もデザインの勉強をして、必死に働いてた母親に、感謝はしてるよ。だから、その後その努力が認められた時は嬉しかったし、売れっ子になって家にいることが少なくなっても―――それはそれで、いいことなんだって思ってた。俺ももう小さな子供じゃなかったし。ただ―――その頃から、母親が俺の知らない男の人を連れてくるようになった」


慧の声は穏やかで―――


その瞳は窓の外の木々を見つめていた。


「単なる友達関係じゃないってことは、俺にもわかったよ。でもそれは母親の問題だし、俺が口を出すことじゃないと思ってた。いい気持ではなかったけど。だけどそれも、ほとんど家に帰ってこなくなってからは気にならなかったしね」


そこまで話すと、慧は小さく溜め息をついた。


「好きな人ができたから結婚したいって言われたんだ。それ自体は別に嫌なことじゃないし―――かえって、そういう支えとなってくれるような人が現れてよかったと思ってる。でも―――」


「でも?」

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