ぎゅっとして
ずっと、慧は寂しい思いをしてきた。


口には出さなくても、きっと寂しかったはず。


この、大きくて静かな家に1人で―――


何かが足りない、と思った。


ここに入った時―――。


それは、人の話し声。


家の中だけじゃなくて―――


外から聞こえてくるはずの車の音すら、ここには届かない。


もちろん、静かなのが悪いわけじゃないけれど。


1人ぼっちで毎日ここにいなければいけない慧にとって、それはどれほど心細かっただろう・・・・・。

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