ぎゅっとして
慧の繊細な手が、あたしの髪に触れた。


「優衣とは、離れたくない。俺は優衣の傍にいたい」


「慧―――」


―――そのまま、慧の唇が触れるかと思った時―――


“コンコン”


突然ノックの音が部屋に響き、あたしはびっくりしてその身を引いた。


慧は表情を変えず―――


溜め息を一つつくと、立ち上がり扉の方へと歩いて行った。


「何?」


慧が声をかけると、扉の向こうから人の気配が。


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