ぎゅっとして
「あの子は、小さいころからおとなしくて、手のかからない子だった。良く言えば聞き分けのいい優等生。でも、自分の思ってることを口にしない分、大人から見ればかわいげのない子だと思われることもよくあったの。でも、本当のあの子はとても優しいシャイな男の子だってこと、私だけはわかっていたわ」


テレビなどでは見たことのない表情だ、と思った。


姿が見えなくても、まるでそこに慧がいるように優しい目で遠くを見つめている。


それは、母親の目、だった・・・・・。


「だけど、私はあの子にずっとさびしい思いをさせてきてしまった。申し訳ないって思いながらも、ずっと・・・・・。だから、今度こそあの子と一緒にいてあげようって、そう思って帰ってきたのだけれど―――」


そこまで言うと、莉緒さんはふっと微笑み、あたしを見た。


何とも言えず優しい、それでいて寂しげな・・・・・


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