ぎゅっとして
「家政婦に聞くまでもなく、あの子の変化にはすぐに気付いたわ。前は―――あんな風に感情を表に出すような子じゃなかったもの。嬉しいときも、怒っている時も、それを表に出さない子だった。それなのに―――私がフランス行きの話をしたら、びっくりするくらい不機嫌になったのよ。私は喜んでくれるかも思ってたのにね。それでも、やっぱり私はあの子と一緒にいたくて、すぐに出発すると言ったのよ。部屋の外に見張りも付けたわ。でも―――家政婦の中に、あの子の協力者がいたのよ。あなたをまんまとこの家に入れてしまうなんて」


くすくすと、楽しそうに笑ってはいるけれど。


あたしは自分がとんでもない所にいるのではないかと、さーっと青くなったのだった・・・・・。


「―――あなたは、慧のことが好きなのよね?」


莉緒さんの言葉に、あたしはこくりと頷いた。


「はい」


「そう・・・・。それなら、仕方ないわね。慧が、あなたを選んだのだから・・・・・」

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