ぎゅっとして
「なんて母親なんだろうって思ったわ。泣いて謝って・・・・・だけどそんな私に、あの子は言ったの。『お母さんのせいじゃない』って。『こんなの、何でもないから気にするな』って。何でもないはずがない。平気なはずがないのに―――」


莉緒さんは、大きな溜息をついた。


「わたしが何とかしてあげたかった。でも、仕事は辞めるわけにいかなかった。どうしたらいいか悩んで―――あの子を転校させることにしたの」


「転校、ですか」


「ええ。あの子は最初嫌がったわ。いじめに負けるみたいでいやだったんでしょうね。半ば強引に転校させて―――でも、あの子がわたしの子供だとわかるとまたいじめられるようになってしまったの」


「そんな・・・・・」


「もともと無口な子だったから、生意気なように見えたのかもしれないわね。前の学校では、いじめがある中でも数人の友達がいたけれど、そこでは全く友達もできずに―――とうとうあの子は家に閉じこもるようになってしまったのよ」



< 214 / 225 >

この作品をシェア

pagetop