ぎゅっとして
「あの子がいじめにあったり、人と付き合うことが苦手になってしまったのはあたしのせいよ。だから、その罪滅ぼしを、いつかしたいと思っていたの。仕事は順調で―――海外に行かなくてはならなくなった時も、最初は断っていたのよ。でも、あの子が―――母さんは自分の好きなことをしろって・・・・・自分はもう大丈夫だからって言ってくれたの」


慧は、優しい人だから。


莉緒さんが自分のいじめで心を痛めていることも、母親として傍にいたいと思っていることもわかっていたのかもしれない。


だからこそ、母親の背中を押してあげたんだ・・・・・。


「フランスで、わたしは恋をして―――この人となら一生やっていけるという人に出会えたわ。もちろん慧のことも話してある。向こうで、3人で暮らせたら―――そう思っていたのだけれど」


莉緒さんは、あたしの方を見ると、嬉しそうに笑った。
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