ぎゅっとして
「どうした?」


先を歩いていた慧が、あたしが足を止めたのを見て振り返る。


「おい、優衣?」


怪訝な顔をして戻ってくる慧。


その瞬間、あたしの目からは涙が零れた。


慧の瞳が、驚きに見開かれる。


「優衣?」


あたしははっとして、その涙を拭う。


「ご、ごめん。ちょっとゴミが目に入って!あの、あたし、もう行くね。美玖が待ってるし!じゃあ!」


そう言うと、あたしは慧に背を向け、走り出した。

 
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